作品概要
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・タイトル:残酷で異常
・原題:Cruel and Unusual
・公開:2014年
・制作国:カナダ
・監督:Merlin Dervisevic
・キャスト:
デイビッド・リッチモンド=ペック(David Richmond-Peck)…エドガー
バーナデット・サキバル(Bernadette Saquibal)…メイロン
ミシェル・ハリソン(Michelle Harrison)…ドリス
モンスール・カタクィズ(Monsour Cataquiz)…ゴーガン
カイル・キャシー(Kyle Cassie)…ランス
マイケル・エクランド(Michael Eklund)…ジュリアン
リチャード・ハーモン(Richard Harmon)…ウィリアム
※英語表記のリンクは英語版Wikipediaへのリンクです
今回は2014年公開の『残酷で異常』の感想を書いていきます。
あらすじ
英語教師のエドガーは自宅のバスルームでフィリピン人の妻メイロンに心臓マッサージを行っている。いくら必死に救命処置をしても妻の意識は戻らずエドガーも意識を失う。意識が戻ったエドガーは車を運転していた。隣にはメイロンがいる。混乱したエドガーは車を停めて視界の中に入った木の元へ歩いて行く。その夜、自室のドアを開けたエドガーが入った先は見たこともない建物の中だった。
不当に妻殺しの罪に問われたエドガーはその謎の施設でディスカッションに参加させられ、何度も殺害時の現場を追体験することになる。
繰り返し殺害の日に戻ることで殺害の動機が次第に明らかになっていく…
キャスト
デイビッド・リッチモンド=ペック(David Richmond-Peck)…エドガー役
主人公のエドガー役を演じたのはデイビッド・リッチモンド=ペック(David Richmond-Peck)。
1974年4月5日生まれ、カナダ・オンタリオ州出身。
大学卒業後に演劇のトレーニンングスクールで演技を学ぶ。2004年にコメディ映画でデビュー。『地球が静止する日』『猿の惑星: 創世記』など多くのアメリカ映画にも出演している。
ミシェル・ハリソン(Michelle Harrison)…ドリス役
自殺をして施設に入れられた女性、ドリスを演じるのはミシェル・ハリソン(Michelle Harrison)。
アメリカ・ワシントン州出身。
1999年に映画デビュー。出演作に『ペイチェック 消された記憶』『臨死』『わすれた恋のはじめかた』などがある。
マイケル・エクランド(Michael Eklund)…ジュリアン役
子供を溺死させた罪で施設に入れられたジュリアン役を演じるのはマイケル・エクランド(Michael Eklund)。
1962年7月31日生まれ、カナダ・サスカチュワン州出身。
2001年にテレビドラマ『ヤング・スーパーマン』でデビュー。以降、『88ミニッツ』『Dr.パルナサスの鏡』『沈黙の啓示』『ザ・コール 緊急通報指令室』などに出演。
悪役やアンチヒーロー役を演じることが多い。
感想
※この記事はネタバレがあります。未視聴の方はご注意ください。
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私は殺人事件のニュースを見ると毎回、殺害の動機が気になってしまう。
ニュースになった時点では情報がまだ少なく、動機まで説明するケースは殆ど無い。
よっぽど大きな事件だと続報で動機を流す場合もあるが、「別れ話を持ち出されて」「借金を抱えていた」「個人的な恨み」など、二言三言で終わるような簡潔な説明しかしない。
快楽殺人ではない限り、人が人を殺すにはそれなりの深い理由がある。
殺人者の生い立ちまで遡らなければその答えが出ないこともあるし、殺人者自身がその理由を分かっていないことも多い。
今回の映画の主人公エドガーも、最初は自分が妻を殺したのは事故だと思っていた。
しかし、何度も殺害の日に戻ることで自分に殺意があったことに気づく。
その殺意は妻メイロンの裏切りから来るものだった。
この時点でもエドガーはまだ本当の意味で自分の罪を認めてはいなかった。
そして、自分がゴーガンやランスの立場になって初めてメイロンの気持ちが理解できたのだ。
メイロンが自分を殺そうとした動機は、自分がゴーガンに対して発した言葉が発端だった。
ゴーガンのことを何よりも大事に思うメイロンは、自分たちの生活を守るためにエドガーを殺す行動に出てしまう。
再婚相手の男と共謀して我が子を虐待する母親がいる一方で、大半の母親は自分の子供が何よりも一番大事だ。(子供を大事にしている母親のニュースは取り上げられない)
メイロンは経済的にエドガーに依存してはいるが、精神面までは依存しきっていない。抑圧された生活の中で次第に愛情も不安定なものになり、逃げ場のない追い詰められた状態でエドガーの殺害に至ったと考えられる。
そのことを理解した上でエドガーの愛情は一方的なものから相手を理解する愛情へ変わり、二人(メイロンとゴーガン)の元から去ることを決意したのだと思う。
そう考えるとあの施設は、妻に殺された理由を知ること、そして自分の本当の罪を認めること、この二つをクリアする為に存在した場所だったとも言える。
辛い試練が繰り返されて観ているこちらも辛かったが、最後の木のシーンではサプライズがあり、施設に戻ったエドガーの清々しいドヤ顔で90分の苦痛が帳消しになった。
罪を受け入れ、本当の愛を知った人間の顔はあんなに自信に満ち溢れるものなのか。
今回、視聴したあとに気づいたのは、エドガーの視点と同じように自分も周りの登場人物の印象が変わっていったということ。
最初にエドガーは自分が妻を殺したのは故意ではなかったと思い込んでいた。その時点では観ているこちらもエドガーに非は無いと思っていた。
その後に、妻が銀行口座を作ったり兄のランスに電話をかけているシーンを観て、私もエドガー同様に妻を疑ってしまった。
結局は妻のエドガーへの愛情は消えていなかったし、心配もしていたのだ。
他人の印象は自分の見方一つでこんなにも変わるものなのかと驚いた。
表面的な人間の行動だけで人を判断してしまうと人生が大きく狂ってしまうこともあるという警告にも思えた。
部屋番号”7734″の意味
施設に来て早々、エドガーは評議員に7734番の部屋に行けと言われる。
この7734という部屋番号が妙に気になってメモを取っていたのだが、後から調べてみるとどうやらこういうトリックが隠されていたらしい。
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あの施設の第一印象として「地獄があるとすればこんな場所なんだろうなぁ」と思っていたが正にその通りだったとは。
二回目の視聴で気づいたこと
一度観た後にもう一度初めから観返してみると様々な伏線が回収できる。
特に冒頭のシーンでは物語のヒントとなるアイテムが連続で映るのでこのシーンを観返すだけでも面白い。
0:00:55 銀行からの手紙
0:01:03 車のプラモデル(友達がいないオタク的な匂わせ?)
0:01:08 芝刈り機
0:01:10 メヌードの器
0:01:13 英語学校の写真に写るエドガーとメイロン
0:01:16 パシフィックエアライン(ベトナムの航空会社)前で撮った写真
0:01:17 エドガーとメイロンの結婚式の写真(ゴーガンの表情が暗いのが切ない)
0:01:22 Antifreeze(不凍液)のボトル
0:03:08 木とドリスの家
最後に
やっぱりこの世で一番幸せな人間とは、人を愛することができる人間なのかなと思う。
ドフトエフスキーは『カラマーゾフの兄弟』でこう書いた。
「地獄とは何か、それはもはや愛せないという苦しみだ」
育った環境で小さい頃からそれが自然にできる人間もいれば、死ぬまでできない人間もいる。
今回の主人公は地獄に行って初めてそれができたのだ。
できれば生きている間にできるようになりたいが、生涯のテーマと言って良いほど難しいことではある。
この映画にはそのヒントが隠されている。
大切な相手との人間関係に影が差したときはまたこの映画を観返してみようと思った。
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