『 見知らぬ乗客(1951)』ほぼすべての役者がハマり役。小物使いやカメラワークにセンスが光るほんのり不気味なヒッチコック作品。

3.0
サスペンス・ミステリー
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作品概要

タイトル:見知らぬ乗客
原題Strangers on a Train
公開:1951年(日本公開は1953年)
制作国:アメリカ
監督アルフレッド・ヒッチコック
脚本レイモンド・チャンドラー
キャスト
 ファーリー・グレンジャーFarley Granger)…ガイ・ヘインズ
 ロバート・ウォーカーRobert Walker)…ブルーノ・アントニー
 ルース・ローマンRuth Roman)…アン・モートン
 パトリシア・ヒッチコックPat Hitchcock)…バーバラ・モートン
 レオ・G・キャロルLeo G. Carroll)…モートン上院議員
 ケイシー・ロジャースKasey Rogers)…ミリアム
  

今回は1951年公開の『見知らぬ乗客』の感想を書いていきます。

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あらすじ

テニス選手のガイ・ヘインズはある日、列車の中でブルーノ・アントニーという男に声を掛けられる。やたらとガイの身辺に詳しいその男は、ガイが妻のミリアムと不仲で上院議員の娘・アンと不倫をしていることも知っていた。一方でブルーノは父親のことを殺したいほど嫌っており、ガイに交換殺人を持ち掛ける。冗談だと思ったガイは軽く受け流しブルーノと別れるが、数日後ブルーノはミリアムを本当に殺害してしまう。その日をきっかけにガイはブルーノの粘着行為に悩まされることになる…

キャスト

ファーリー・グレンジャー(Farley Granger)…ガイ・ヘインズ役

主人公のガイ・ヘインズ役を演じたのはファーリー・グレンジャー(Farley Granger
1925年7月1日生まれ、カリフォルニア州サンノゼ出身。2011年(85歳)没。

17歳のときにエージェントに見出され、1943年に映画『北極星』でデビュー。
代表作としてヒッチコック作品の『ロープ』『見知らぬ乗客』、ルキノ・ヴィスコンティ監督の『夏の嵐』がある。
2007年に出版した自伝ではバイセクシャルであることをカミングアウトしている。

ロバート・ウォーカー(Robert Walker)…ブルーノ・アントニー役

主人公につきまとう不気味な男ブルーノを演じているのはロバート・ウォーカー(Robert Walker
1918年10月13日、アメリカ・ユタ州ソルトレイクシティ生まれ。1951年(32歳)没。

幼少期に両親が離婚し、学生時代は問題を起こす子供であったが学芸会で主役を演じたことがきっかけで役者の道を志すようになる。
1939年、ニューヨークの演劇学校で同期だったジェニファー・ジョーンズと結婚し二児をもうけるも1945年には破局。精神的に不安定になり酒に溺れるようになる。二度の再婚の後、復帰作として本作に出演。演技が高い評価を得るものの同年の1951年、飲酒後に主治医より投与された鎮静剤によるアレルギー反応にて死去。

一人目の妻、ジェニファー・ジョーンズとの子供は二人とも俳優である。

ルース・ローマン(Ruth Roman)…アン・モートン役

主人公の恋人役を演じるのはルース・ローマン(Ruth Roman
1922年12月22日生まれ、アメリカ・マサチューセッツ州出身。1999年(76歳)没。

ハイスクール卒業後、ボストンの名門の演技学校に通い女優を目指す。ニューヨークでモデルなどの下積み時代を過ごした後、ハリウッドに渡り1943年に脇役で映画デビュー。
代表作として『ギルダ』『チャンピオン』『見知らぬ乗客』などがある。

パトリシア・ヒッチコック(Pat Hitchcock)…バーバラ・モートン役

主人公の恋人アンの妹役を演じるのはパトリシア・ヒッチコック(Pat Hitchcock)
1928年7月7日、イギリス・ロンドン生まれ。父親はアルフレッド・ヒッチコック。

幼少期から女優に憧れ、1936年、ヒッチコック監督の『サボタージュ』にエキストラとして映画デビュー。以降、『Alfred Hitchcock Presentsヒッチコック劇場)』や『十戒』に出演する。ヒッチコックの代表作『サイコ』では主人公の職場の同僚役として出演している。

1960年以降は主婦業に専念している。

感想

※この記事はネタバレがあります。未視聴の方はご注意ください。


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個人的にヒッチコック映画は当たり外れが多いと思っている。

「ヒッチコック=サスペンスの神様」という先入観と期待感ありきで観るからだろうか。

この『見知らぬ乗客』については、初見のつもりで視聴したものの、観ている途中で前にも観たことがあることに気づいた。

唯一覚えていたのは妻の殺害シーンと暴走する回転木馬のシーンのみで他の部分はほぼ忘れていた。

全体を通して薄ーく不気味さが残るような作品で、際立ってハラハラドキドキする場面は少なかった。

主人公のガイが早い段階で警察に事情を話せばすぐに終わる話ではあるが、「どうせ言っても信じてもらえない」という理由で最後まで引き延ばすのは少し根拠が弱いように思った。

ジリジリと主人公をしつこく追い回すブルーノも確かに気持ち悪いのだが、もっと異常性を出しても良いくらいだった。

素晴らしいなと思ったのは、アン以外の役者がみんなハマり役ということ。

真面目で実直なテニス選手っぽい主人公のガイ、
マザコンのボンボンっぽいブルーノ、
息子に甘々な少しイカれたブルーノの母親、
本当に上院議員っぽいアンの父親、
打算的な尻軽女っぽい妻のミリアム、
列車の中で酔っ払っている大学教授。

役者の選定が巧みなのか役者の演技力が凄いのか。おそらく両方だろう。

ブルーノ役を演じたロバート・ウォーカーはこの作品でその演技が絶賛されたが、次の作品を撮影している途中で32歳という若さで亡くなっている。

女優である妻との間に生まれた長男、ロバート・ウォーカー・Jrも俳優になっており、まるで父親の生き写しのようにそっくりである。

Robert Walker Jr.

妻ミリアムの眼鏡

今回、妻のミリアムが掛けている眼鏡が、物語の中でキーアイテムとなっている。

夜の遊園地でミリアムが殺されるシーンでは地面に落ちた眼鏡にその描写が映り、静かに倒れこむミリアムとブルーノの姿を不気味に捉えている。

また、アンの妹バーバラが同じような眼鏡を掛けていることでミリアムを連想したブルーノが気を失うシーンも印象的である。

ちなみにミリアムの素顔が映るシーンはほとんど無いが、ミリアム役のケイシー・ロジャースの素顔は普通に美人である。

ミリアム役のケイシー・ロジャース

メトカフの場所

主人公の故郷であり殺人の舞台にもなる”メトカフ“。

作中ではニューヨークとメトカフを往復する描写が何度か出てくるが、実際にどの辺にある場所なのか調べてみた。

メトカフはケンタッキー州の南部にある郡で、禁酒法の名残である禁酒郡の一つである。

メトカフ郡の位置
アメリカの禁酒郡(出典:Wikipedia

ニューヨークからメトカフは823マイル(1,324km)離れており、車では約13時間掛かる。

ガイが試合終了後、短パン姿でタクシーに駆け込むのも納得な距離である。

最後に

内容はほとんど忘れていたとは言え、改めて観てみると小道具の使い方や特殊な映し方などはさすがヒッチコックだなぁと感心した。

過激すぎないけどほんのりじわじわ不気味、というのがヒッチコック映画の良さかもしれない。

昔観てほとんど内容を忘れているヒッチコック作品が他にもありそうなので少しづつ観ていこうと思う。

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