作品概要
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・タイトル:ナイトクローラー
・原題:Nightcrawler
・公開:2014年(日本公開は2015年)
・制作国:アメリカ
・監督:ダン・ギルロイ
・キャスト:
ジェイク・ジレンホール(Jake Gyllenhaal)…ルイス・ブルーム
リズ・アーメッド(Riz Ahmed)…リック
レネ・ルッソ(Rene Russo)…ニーナ・ロミナ
ビル・パクストン(Bill Paxton)…ジョー・ロダー
今回は2014年公開の『ナイトクローラー』の感想を書いていきます。
あらすじ
まともな仕事にありつけず軽犯罪で日銭を稼ぐ男ルイスは、偶然通りかかった事故現場で報道スクープ専門の映像パパラッチの存在を知り、自分もやってみようと思い立つ。早速ビデオカメラを手に入れたルイスは、警察無線を傍受して事件や事故の現場に猛スピードで駆けつけ、悲惨な映像を次々と撮影していく。過激な映像で高額な報酬を得るようになったルイスは、さらなるスクープ映像を求めて行動をエスカレートさせていき、ついに一線を越えてしまう。
映画.comより引用
キャスト
ジェイク・ジレンホール(Jake Gyllenhaal)…ルイス・ブルーム役
主人公のルイス・ブルーム役はジェイク・ジレンホール(Jake Gyllenhaal)。
1980年12月19日生まれ、米国カリフォルニア州ロサンゼルス出身。
1991年公開の『シティ・スリッカーズ』で映画デビュー。1999年公開の『遠い空の向こうに』で映画初主演を果たし、批評家から高い評価を受ける。
その後は『ドニー・ダーコ』(2001年)、『ゾディアック』(2007年)、『プリズナーズ』(2013年)などの作品に出演。
リズ・アーメッド(Riz Ahmed)…リック役
主人公の助手、リック役を演じているのはリズ・アーメッド(Riz Ahmed)。
1982年12月1日生まれ、イングランド出身。
パキスタン移民の両親の元に生まれ、オックスフォード大学を卒業した後、ロンドン大学で演技を学ぶ。
2006年に映画デビュー。その後は本作『ナイトクローラー』(2014年)、『ジェイソン・ボーン』(2016年)、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016年)などの作品に出演。
2020年には『サウンド・オブ・メタル -聞こえるということ-』で聴覚を失うドラマーの役を演じ、アカデミー主演男優賞にノミネートされた。
関連
レネ・ルッソ(Rene Russo)…ニーナ・ロミナ役
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テレビ局の女性ディレクター役を演じるのはレネ・ルッソ(Rene Russo)。
1954年2月17日生まれ、カリフォルニア州バーバンク出身。
16歳からモデル活動を始め、1987年にテレビシリーズ『Sable』で女優デビュー。1989年に『メジャーリーグ』で映画デビューする。
その後は『アウトブレイク』(1995年)、『マイティ・ソー』(2011年)、『マイ・インターン』(2015年)などに出演。
夫は今作の監督であるダン・ギルロイ。
感想
※この記事はネタバレがあります。未視聴の方はご注意ください。
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先日観た『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』で、主役のリズ・アーメッドの演技がとても良かったので、彼が出演している他の映画を観たくなりAmazonプライムにあったこの作品を早速観てみた。
感想は、とにかく主人公の男が気持ち悪い!!
こんなに気持ち悪いキャラクターは『ノーカントリー』のアントン・シガー以来かも知れない。
まずは冒頭の警備員暴行からの腕時計を盗むシーンでかなりヤバイ奴と認識。
その後に盗品を売りつけた相手に雇ってくれと頼むシーンでは、気持ち悪いほどにペラペラと自分の長所を述べ自分を売り込む。
「泥棒は雇わない」と断られてニタリと笑うのだがこの笑顔がまた気持ち悪い。
ジェイク・ジレンホールはこの役作りの為に9キロ痩せ、昼夜逆転の生活で自分を追い込んだらしい。その成果は如実にルイスの人相や猫背気味の姿勢の悪さに現れている。
そしてパパラッチ活動に味を占め始めた辺りから、こいつは絶対に何かやらかすというハラハラ感が出てくる。
案の定、事件現場の家の中に侵入するわ、現場の死体を勝手に動かすわ、行動がどんどんエスカレートしていく。
ルイスの行動が過激になる程、「こいつはやばい」「やりすぎだろ」などとハラハラしながらもすっかりとこの作品の術中にハマってしまっていた。
気が付けば過激なニュースに飛びつく野次馬のように好奇心を剥き出しにした自分がいたのである。
この映画が視聴率至上主義の報道業界への批判も含んでいるとすれば、その視聴率を助長するミーハーな視聴者の心理をあぶり出されたようで妙な居心地の悪さを感じた。
調子に乗ったルイスはテレビ局の女性ディレクターであるニナを脅し、ネタの提供と引き換えにセックスを強要する。
この脅し方もまぁー実に卑怯で憎たらしい。
業界で酸いも甘いも噛分けてきたやり手のディレクターが、ひょっこり現れた息子程の歳下の男のアプローチをどのようにかわすのかと見ていたら…なんと予想外の展開へ。
2人がヤッたであろうその後のつなぎのシーンに映る謎の空気人形が狂気を孕んでいた…
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結局最後にニナは大スクープ映像を撮ってきたルイスにメロメロになる。この女も頭のネジというか倫理観がぶっ飛んでるけど、やっぱり仕事ができる男はモテるということだろうか。
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気弱な助手役を演じたリズ・アーメッドの演技も良くハマっていた。
世間知らずな好青年だった彼が不満を募らせて憎まれ口を利くようになったのは分かりやすい死亡フラグ。
それでも途中で逃げ出さなかったところに彼の愚鈍さと実直さが出ていて何とも辛かった。
監督ダン・ギルロイが伝えたかったこと
最後の終わり方はかなり予想を裏切られる展開だった。
サイコ男のサクセスストーリーのように仕上げた意図は一体何なんだろう?と思い、監督であるダン・ギルロイのインタビューを読んでみると、ルイスのバックグラウンドをこのように語っていた。
私は彼が子供の頃一人でいるのを想像しました。そして彼が持っていたのは彼のコンピューターだけで、彼はそのコンピューターでネットサーフィンばかりしていました。(中略)そして、彼の絶望的な孤独と荒れ狂う狂気の中で、資本主義の教訓は彼にとって宗教になりました。彼は超資本主義者であり、それは彼に正気を与え、最終的に彼を狂気に駆り立て、彼を限界に追いやる宗教でした。
引用元:Indie Wire
なるほど。ルイスがあれほど成果主義で利益の為なら犯罪さえも厭わないというのが納得できる。
そして物語の終わり方についてはこのように語っている。
物語の最後は、ビジネスで成功した男のサクセスストーリーとしてアプローチします。そのようにアプローチした理由は、最後に観客に「ああ、問題はこのサイコパス野郎だ!」と思われたくなかったからです。「問題なのは、この男を利用して報酬を与えた世界かもしれない」と観客に気付いてもらいたかったのです。
引用元:Indie Wire
Oh…そういうことだったのか。正直そこまで考えて観ていなかったよ…
この監督のインタビューを読んで、やっとこの映画で感じた違和感の理由が分かった。
エスカレートするゲスい行動とは裏腹にルイスがどんどん成功していくこと、ゲスいことをした時に流れるBGMがなぜか爽やか(エンディングも含めて)なこと、そしてルイスの行動を正当化するような展開と演出。
これはすべて監督がルイスをただのサイコパス野郎にしたくなかったからなのだ。
それでも、ルイスの過去が実際に映像として流れるシーンは皆無だし、彼がどのようにしてああいう人間になったのかは観る側の想像に委ねる形になっている。
監督の意図に気付く観客もいれば私のように気付かない観客もいるだろう。
すべてを説明せずに余白を残したのがこの映画が評価された理由の一つかもしれない。
最後に
今回はとにかく主人公が気持ち悪く、観ている間何度も鳥肌が立った。
でも、これだけ感情を揺さぶられた映画は久しぶりだったかもしれない。
そしてやっぱり監督のインタビューは読んでおくもんだなぁと思った。
ネット社会、そして格差問題はこの映画の公開当時よりも一層進んでいる。
名も無きYouTuberが努力次第で億万長者になるのも夢ではないように、ルイスのような行動力のある人間がのし上がれる時代になったのだ。
この映画がサイコパス映画ではなくヒーロー映画と言われる日もそう遠くはないかもしれない。
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