『これが私の人生設計(2014)』男性社会の中で奔走する女性建築士家の笑いあり感動ありのストーリー。元気と勇気をもらえる映画!

4.0
コメディ
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作品概要

(C)2014 italian international film s.r.l

タイトル:これが私の人生設計
原題Scusate se esisto!
公開:2014年(日本公開は2016年)
制作国:イタリア
監督リッカルド・ミラーニ
キャスト:パオラ・コルテッレージ(Paola Cortellesi)…セレーナ・ブルー役
 ラウル・ボヴァRaoul Bova)…フランチェスコ役
 マルコ・ボッチ…ニコラ役
 エンニオ・ファンタスティキーニ(Ennio Fantastichini)…リパモンティ役
 コラード・フォルトゥーナ(Corrado Fortuna)…ピエトロ役
 ルネッタ・サヴィーノ(Lunetta Savino)…ミケーラ役
公式サイト映画『これが私の人生設計』公式サイト

今回は2014年公開の『これが私の人生設計』の感想を書いていきます。

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あらすじ

建築家として世界各国で華々しいキャリアを積んできたセレーナは、ふと自分を見つめ直し「新たなステップ」を踏み出そうと故郷のローマに帰ってきた。しかし、イタリアの建築業界は男性中心の社会で、ろくな仕事にも就けず貯金も底をつく。しかたなくレストランでウエイトレスとして働き出すと、超イケメンのオーナー、フランチェスコが何かと優しくて、ついつい彼に恋してしまう。しかし、クラブで男たちに囲まれて超絶に踊り狂うフランチェスコを見て“ゲイ”だと気付き、あえなく失恋。結局、2人は恋愛ではなく友情で結ばれるのだった。そんな時、公営住宅のリフォーム建築案の公募を知ったセレーナは、男性のフリをして応募し、自分はアシスタントだと偽って面接に臨む。すると企画が採用されてしまい、困ったセレーナはゲイ友のフランチェスコに身代わりを頼むが…。

『これが私の人生設計』公式サイトより

キャスト

パオラ・コルテッレージ(Paola Cortellesi)…セレーナ・ブルーノ役

主人公のセレーナ役を演じているのはパオラ・コルテッレージ(Paola Cortellesi)
1973年11月24日生まれ、ローマ出身。

13歳で歌手としてデビュー。19歳の時に演劇学校に入学し演技を学び始める。
テレビ番組でキャリアを積んだ後、映画にも進出し数々の作品に出演する。2011年にはイタリア映画の最高の名誉とされるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で最優秀女優賞を受賞。同年に今作の監督であるリッカルド・ミラーニと結婚する。

ラウル・ボヴァ(Raoul Bova)…フランチェスコ役

フランチェスコ役はラウル・ボヴァ(Raoul Bova)
1971年年8月14日生まれ、ローマ出身。

16歳の時に100m背泳ぎで地元のチャンピオンになる。21歳で兵役を果たし、除隊後は体育学校へ入学した後、役者を目指すために演劇学校に進む。
1993年にはコメディ映画でデビュー。2002年にはシルヴェスター・スタローンと共演した『ザ・ボディガード』でハリウッド進出を果たす。

イタリアの景気について

イギリスの設計事務所で働いている主人公の同僚が「次はニューデリー(インド)を目指す」「中国の次はドバイだ」と言っている中、主人公が「私はイタリアへ帰るつもり」と言うとその場にいた同僚たちが全員振り返り、白い目で見るシーンがある。

この場面を観て「そこまでイタリアって景気悪いの?」と驚いた。

ちなみに国の豊かさを示すGDP数値で言えばイタリアは世界8位。

確かにイギリスやインドよりは低いが、久しく不景気と言われている日本が3位なのでGDPだけでは何とも言えない。

一方、イタリアの相対的貧困率は13.7%と日本よりも低い状況というデータもある。

「5人に3人が無職」のイタリアが日本より豊かに見えるワケ 社会全体で「効率よく」稼いでいる (2ページ目)
先進7カ国で唯一、日本と同レベルとなっているのがイタリアですが、どういうわけかイタリアは日本から見るとかなり豊かに見えます。1人あたりのGDPが日本の1.6倍もあり、大卒の初任給が50万円を超えることも珍しく…

加えてこんな記事も。

日本より貯蓄率が低いイタリア、平気で生活を送れる理由 – MONEY PLUS
イタリア人の5人に1人は貯蓄額が1,000ユーロ(約12万円)以下。日本人に比べると貯蓄意識は高くありません。それでも平気で生活できるのはなぜでしょうか? 

不景気でも陽気な国というイメージはあながち間違っていないかもしれない。

イタリア女性の社会的地位について

この映画では、イタリアの男性社会における女性差別と地位の低さについても取り上げられている。

イタリアの女性は強いイメージがあったのでこれも意外だった。

少し古いデータではあるがこちらの記事によると、女性の社会的地位の研究結果でイタリアは58か国中45位と出ている。

労働の場における機会の平等は、イタリア人女性にとってはいまだ夢のままである。実際、イタリア人女性は、労働への参加および社会生活において、世界レベルでみても最も差別を受けているケースの1つである。ギリシャ、インド、トルコおよびエジプトの状況よりは良いが、ジンバブエ、タイおよび南アフリカと比べると、イタリアの方が劣っている。

これは、“Gender gap index”に掲載された世界経済フォーラム(WEF)の研究結果であるが、トップは予想通り、北欧の女性であった(スウェーデンを筆頭に、ノルウェー、アイスランド、デンマーク、フィンランドと続く)。イタリアは、1から7までの評価によると3.5で(トップのスウェーデンは5.53)、58か国中45位である。

女性の地位に関する世界経済フォーラムの報告書

研究を行った世界経済フォーラムの見解として、イタリアやギリシャのような家父長制の文化が女性の社会的差別に繋がっているとしている。

劇中に出てくる集合住宅について

劇中に出てくる巨大な集合住宅は、イタリアのローマに実在するコルヴィアーレ(Corviale)という建物。

1972年に23名の設計チームによって立案・設計され、1975年に着工するものの、建設会社の倒産や設計者の死亡によって工事は頓挫しつつも1984年には住宅街区が完成。

当初の構想では、住宅部分と商業施設の複合建築物として建設する予定だった。(4つの野外劇場、地区事務所、図書館、学校[幼稚園から中学校まで]、保健サービス、市場、500席の会議室、フロア全体の効率的なサービスと広い共有スペースを作る予定だった。)

しかし住宅街区が完成した後、商業施設が未完成のまま700世帯もの家族が入居し、不法占拠する事態となる。

緩い管理体制と複合施設化の頓挫などが原因でコルヴィアーレは荒廃が進む。

その後、コルヴィアーレはローマ郊外の衰退の象徴と言われてきたが、2000年以降は再開発が進められ現在はスタートアップ企業のオフィスやスーパーマーケットや協同組合などが入っている。

劇中の主人公は、実在する女性建築家グエンダリーナ・サリメイ(Guendalina Salimei)さんをモデルにしており、彼女のプロジェクトは現在も進行中とのこと。

参考文献:『Corviale』Wikipedia

コルヴィアーレの場所(GoogleMap)

41°51'02.0"N 12°24'42.0"E · イタリア ローマ県 ローマ ムニチピオ・ローマ XII
イタリア ローマ県 ローマ ムニチピオ・ローマ XII

感想

※この記事はネタバレがあります。未視聴の方はご注意ください。


イタリア映画を観るのは久しぶりである。

イタリア映画と言えば、フェデリコ・フェリーニやジュゼッペ・トルナトーレが有名だ。

昔観た『道』『自転車泥棒』『ひまわり』『ライフ・イズ・ビューティフル』などの名作は未だに記憶に残っているものが多い。

とはいえ近代のイタリア映画は多分ほとんど観たことがない。(イタリア映画と気づかずに観ている可能性もあるけど)

イタリア自体は好きで、イタリアの庶民の暮らしをドキュメンタリー風に映した『小さな村の物語』(BS日テレ)は録画をして毎回観ていた。

風土や田園風景も日本とよく似た地域があり、勝手に親近感を抱いていたし、イタリア料理も大好きだ。

そんな感じで観た今回の映画。

感想を言うと、凄く面白かったしめちゃくちゃ笑った!!(語彙力)

笑いのツボって世界共通なんだなーと嬉しくなった。

主人公のセレーナが明るくて、竹を割ったような性格で、とにかく観ていて気持ち良い。

女性差別がここまである国だとは思わなかったけど、やっぱり劇中の女性たちは主人公を含めみんな強い。

仕事中にイケメンオーナーを盗撮するレストランの従業員女性たち。
朽ちた公営住宅で不満を持ちつつも気丈に生きるお婆ちゃん。
つわりで嘔吐しても毎日出社する設計事務所の女性。
忠実なようであり実は陰の立役者である秘書。
しつこい同僚を黙らせるために自分からキスをする主人公。

社会的な評価はされていないとしても強固なアイデンティティをどの女性も持っている。

あとは、出てくる人たちがみんな愛情に溢れている。

父親の形見のポンコツのバイクを大事に乗っている主人公。
娘の近況を心配して地元から押しかける母親と叔母。
親友のために建築家を演じるゲイ。
社長の家族の誕生日プレゼントを毎年欠かさず贈る秘書。
体を張って大阪城を押さえるゲイ。
盗まれたバイクを探してくるモヤシ男。
父親がゲイだと本人には聞かず理解した息子。
住民の快適な暮らしを第一に考えて設計した主人公。

みんな立場も方法も違うけど相手を思う気持ちは同じ。根底には愛がある。

前半部分はお笑い要素が満載だったけど、ラストに近づくにつれ胸が温まる場面が多く、バランスが良いなぁと思った。

最後に

こんなに笑えて感動もあるハッピーな映画は久しぶりに観た。

仕事に疲れた時や会社で理不尽な思いをした時にぜひ観てもらいたい映画だ。

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