作品概要
・タイトル:イヴの総て
・原題:All About Eve
・公開:1950年
・制作国:アメリカ
・監督:ジョセフ・L・マンキーウィッツ
・キャスト:
ベティ・デイヴィス(Bette Davis)…マーゴ・チャニング
アン・バクスター(Anne Baxter)…イヴ・ハリントン
ジョージ・サンダース(George Sanders)…アディソン・ドゥイット
ゲイリー・メリル(Gary Merrill)…ビル・サンプソン
セレステ・ホルム(Celeste Holm)…カレン・リチャーズ
ヒュー・マーロウ(Hugh Marlowe)…ロイド・リチャーズ
グレゴリー・ラトフ(Gregory Ratoff)…マックス・フェビアン
セルマ・リッター(Thelma Ritter)…バーディ
マリリン・モンロー(Marilyn Monroe)…カズウェル
今回は1950年公開の『イヴの総て』の感想を書いていきます。
あらすじ
アメリカ演劇界最高の栄誉であるセイラ・シドンス賞が、新進女優イヴ・ハリントンに与えられた。満場の拍手のうち、イヴの本当の姿を知る数人だけは、複雑な表情で彼女の受賞を見守るのだった…。
田舎から出てきた女優志望のイヴは、ブロードウェイの大女優のマーゴの付き人となる。自分の大ファンだというイヴに目をかけるマーゴだったが、イヴは次第に本性を表してゆき、批評家やマーゴの周りにいる人々に取り入ってゆく。ある日、出るはずの舞台に間に合わなかったマーゴの代役として出演するチャンスをつかみ、イヴは批評家たちから絶賛される。これを皮切りに、劇作家や有名批評家に巧く取り入り、マーゴまでも踏み台にしてスター女優へのし上がっていく。
『イヴの総て』Wikipediaより引用
キャスト
ベティ・デイヴィス(Bette Davis)
イヴに踏み台にされる舞台女優役を演じているのはベティ・デイヴィス(Bette Davis)。
1908年4月5日生まれ、1989年10月6日(81歳)没。
1929年、21歳でブロードウェイデビュー。1931年にユニヴァーサル映画に雇われスクリーンデビューを果たす。全盛期にはハンフリー・ボガートと共演した『化石の森』(1936)、ヴェネツィア国際映画祭女優賞を獲得した『札つき女』(1937)、中年期から後期には本作『イヴの総て』を筆頭に『何がジェーンに起ったか?』(1962)、『ナイル殺人事件』(1978)などに出演。ハリウッドを代表する演技派女優の一人である。
アン・バクスター(Anne Baxter)
イヴ役はアン・バクスター(Anne Baxter)。1923年5月7日生まれ、1985年12月12日(62歳)没。
10歳で女優になることを志し、13歳でブロードウェイデビュー。1940年に17歳で20世紀フォックスと契約し映画デビューを果たす。1946年の『剃刀の刃』でアルコール中毒症の娘を演じてアカデミー助演女優賞を受賞。本作『イヴの総て』では新人女優イヴ・ハリントンを演じて名実共に彼女の代表作となった。その後も『十戒』や『刑事コロンボ』シリーズの『偶像のレクイエム』に出演し、テレビや舞台で活躍した。
ちなみに母方の祖父は有名な建築家のフランク・ロイド・ライトである。
ブロードウェイの歴史について
今回の『イヴの総て』の舞台となるのが1940年代頃のブロードウェイ。
ブロードウェイを舞台にした作品が数多くあるように、舞台の裏側にも人間ドラマがある世界である。
そこまで人々を翻弄し魅了し続けるブロードウェイの歴史を追ってみることにした。
1700~1800年代のブロードウェイ
ブロードウェイ (Broadway)とはアメリカ合衆国ニューヨーク州を南北に走る目抜き通りのこと。
特に有名なのが、ニューヨーク市マンハッタンを走る区間で、通常ブロードウェイと言えばこの区間を指す。
通りの名前が現在のミュージカルとしての代名詞となった起源は、1750年代のマンハッタンにまで遡る。
1750年、マンハッタンで最初の劇場と言われているナッソー通りのシアター(Theatre on Nassau Street)で初めてプロの役者によるミュージカル「ベガーズオペラ」の公演が行われる。
1752年には更にイギリスからプロの役者12人を招集し、バラード・オペラなどの公演を増やしていく。
1800年代にはアメリカの興行師P.T.バーナムが運営するブロードウェイの娯楽施設が反響を呼び、ブロードウェイが人気のナイトスポットの一つとなる。
この頃にはシェイクスピアの演劇が頻繁に上映され、1865年にはエドウィン・ブース(リンカーンの暗殺者ジョン・ウィルクス・ブースの実の兄)が『ハムレット』の100回の公演記録を達成する。
1800年代後期にはオフ・ブロードウェイ(100~499席のミニ劇場とその管理組織。100席以下のオフ・オフ・ブロードウェイもある)が確立され、後にブロードウェイの商業化への対抗および新世代の発表の場として発展していく。
1900年代のブロードウェイ
1900年代に入り、ウィンチェル・スミスとフランク・ベーコンによる演劇『ライトニン』が700回の公演を達成。
1910年代にはハリウッドが形成され始め、アメリカが経済的繁栄を迎えた狂騒の1920年代にはサイレント映画からトーキー映画の時代へ。
ミュージカル界でも映画界に対抗してスター役者を起用した豪華なショーを打ち出すもいずれも大きなヒットには結びつかなかった。
そんな中、劇作家のユージン・オニール(後にノーベル文学賞を受賞。二番目の妻との娘はチャップリンの最後の妻)の登場により、停滞していたアメリカの演劇界に近代化の道が開かれることになる。
大恐慌が明けた1940年代から1950年代にかけてブロードウェイは黄金時代に入る。大ヒットした『オクラホマ』は1943年に2,212回という前例の無い驚異的な公演数を打ち出した。
1960年代から1970年代にかけてタイムズスクエア周辺にはゴーゴーバー、風俗店、ピープショー、成人向け映画館が増え、ブロードウェイで上演される合法的なショーの数が減少した。尚、当時のタイムズスクエアの情景は『真夜中のカーボーイ』『タクシー・ドライバー』などの映画作品で観ることができる。
1980年代にはアメリカの舞台プロデューサー兼監督であったジョセフ・パップが、マンハッタンの開発計画による取り壊しから近隣の劇場を救うために保護活動に取り組んだ。
1990年には文化的非営利団体のNew 42nd Streetが市から42丁目の再開発を任命され、ブロードウェイの劇場も改修、改築、解体が行われた。
その後もタイムズスクエア一帯の再開発は進み、ポルノ劇場や低所得の居住者を追い出し、代わりに観光客に優しいアトラクションや高級施設を建設した。
COVID-19による影響
2020年に起きたCOVID-19のパンデミックの影響で、ブロードウェイの劇場は2020年3月12日に閉鎖され、上演中または開幕中の16のショーが閉鎖された。再開は2021年6月を予定している(2021年5月1日現在)。
【参考文献】
・ブロードウェイ (ニューヨーク)(Wikipedia)
・Broadway theatre(Wikipedia)
・Times Square(Wikipedia)
・Joseph Papp(Wikipedia)
感想
※この記事はネタバレがあります。未視聴の方はご注意ください。
この作品が書かれた当時はブロードウェイの黄金時代。
原作自体も実在した女優(Elisabeth Bergner)をモデルにして書かれているから、当時はイヴのように「成り上がり」を夢見て上京した俳優志望者がたくさんいたのだろう。
率直な感想としては、イヴが主役なわりにはあまり目立っておらず、準主役?のベティ・デイヴィスが完全にイヴ役のアン・バクスターを食っていたなぁということ。
ベティ・デイヴィスは昔『何がジェーンに起ったか?』で観たくらいでほとんど知らなかった女優さんだけど、今回の演技ですっかりファンになってしまった。
イヴが腹黒い奴とか、どういう理由であんな救いようのない性格になってしまったのかとか、本当にどうでも良くなるくらいベティ・デイヴィス演じるマーゴ・チャニングが魅力的だった。
当時の大物女優特有の弓型眉がとても様になってたし、あのトリッキーな演技にはゾクゾクした。
とてもワガママで気まぐれな性格だけど、自分の感情に正直で表情豊かで涙脆くて。
だから恋人のビルがイヴに全く靡かなかったのも納得。そもそも業界歴が長くて色んな人間を見てきた演出家があんな腹黒の田舎の小娘なんか相手にするはずがない。笑
マーゴの素晴らしさ以外の見どころは、
・イヴは本性をどのタイミングで現すのか?
・本性がバレた時にどういう態度を取るのか?
・カレンはイヴの本性に気づくのか?
・イヴは最後はギャフンと言わされるのか?
これらを想像しながら観るのが面白かった。
序盤のパーティーのシーンでのマーゴの表情から、イヴがそこまでマーゴから恨みを買っているとは思えなかったので、それも判断材料に入れて観ていたのだが案の定そこまで大きな事件も起こらず、結果的にみんなハッピーで終わったね…
イヴが授賞式で大失態を晒すとか、イヴが暴走して誰かを殺めるとかすれば物語的には盛り上がったと思うのだが。
最後の終わり方は面白かったですね。イヴでも他の誰でもない、突如登場した若い娘のカットで終わるスタイル。あの三面鏡のシーンはいずれ彼女が女優になって色んな役を演じるようになるという示唆にも思えたし、女にはいくつもの顔があるという意味にも取れる。あの映し方の手法には何か元ネタがあるんだろうか。
最後に
やっぱり一流の女優は凄い。画面に映っているだけで圧倒的な存在感だった。
ストーリー自体は盛り上がりに欠けたけど、ベティ・デイヴィスの演技が観れただけでも大満足でした。
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